信頼感ってキャッチコピーでどう表現する?
WEB業界で12年以上、WEBサイトを中心にコピーライターとして数百社以上のキャッチコピーを制作してきましたが、お客様のご要望はさまざま。
なかでも、ざっくりと希望されやすかったのが「信頼感のあるキャッチコピー」を作ってほしいというオーダー。自社で強みを分析しきれていない中小企業においては、プロのライターさんなら魔法使いのようにちょちょいのちょいっと、魔法のコトバでなんとかしてくれるだろうという想いから、気軽に依頼してくるんでしょうけど、まあ無茶ぶりですよねw
でも、そもそも、信頼感ってなぜ必要なんでしょか?
ボクの答えは、「頼んだことがなく、失敗したくないから」。
信頼に値する要素が揃っていれば「信頼感がある」というイメージを与えられ、商品・サービスを購入するハードルを下げることができます。
だから、販売側も信頼感を出して商品・サービスへの購買意欲を促したいわけです。販売側も購入側も重要視しているwin-winの要素なので、できれば演出していきたいものですよね。
今回の記事では、商品・サービスを購入する消費者が信頼感を覚える要素について、インターネット普及前・インターネット普及後の時代の変遷を織り交ぜた視点で解説し、どうやって信頼感あるキャッチコピーとして成立させるかまでをわかりやすく解説します。
お客様に、信頼感を出すキャッチコピーを作れますよ!と自らアピールするのは違いますが、手の内のひとつとしてご参考になれば幸いです。
インターネット普及で激変した「信頼感」
少しだけ昔話をしますが、1990年代当時にボクが小学生だった頃はスマホはおろか、携帯電話は平野ノラさんが抱えるショルダーホンしかない時代。液晶画面すらなく、できるのは電話のみ。メールソフトもカメラでの撮影も検索エンジンも搭載していませんでした。
PCは後ろに出っ張ったハコ型で場所もとるし、値段も高額。一家に一台ではなく、お金持ちの子の家でちょっと触らせてもらうような貴重品でした。ようやく日常的にPCに触れるようになったのは中学生の頃。フロッピーディスクを入れてたいして面白くないゲームをやった思い出が、ボクとインターネットの原風景です。
つまり、インターネット普及以前は、いつでもどこでも「情報収集」ができなかったわけです。スマホがなかったころはわざわざ自宅や会社という場所に行かないとPCでググることもできませんでした。ノートパソコンも今みたいに薄くなく、まな板くらいの分厚さがありましたから持ち運びもできず。カフェでおしゃれに開くようなビジネスマンもノマドワーカーもいなかったわけです。
情報化社会になる・なったと騒がれたインターネット普及の夜明けを知っているボクは、インターネット普及前とインターネット普及後の消費者ニーズの移り変わりをまじまじと見てきました。
現在は新型コロナウイルスの影響で奇しくも2020年はオンライン化元年になるであろうという、マーケティング革命のタイミングですが、ひとつ前のマーケティング革命がインターネット普及だったと振り返ります。
前置きが長くなりましたが、マーケティングの歴史は押さえておいて損はないので実体験を交えて伝えさせていただきました。では、インターネット普及前とインターネット普及後でどのように「信頼感」のモノサシが変わったのかを見ていきましょう。
インターネット普及前の「信頼感」
インターネット普及前の消費者は、現在と違って気軽にスマホやPCでググることができず、情報収集のカベがありました。しかし当時は自分だけでなく、周りの友人や知人も同じ状況なので、情報収集のカベがあるなんて思いません。
主な情報収集方法は家族親戚、友人知人の生の声か、今より爆発的に人気があったテレビ・新聞というマスメディア、下世話なところでは週刊誌。
つまり、「自分での情報収集」はまったくすることなく、「他人に聞く情報収集」がすべてだったとも言えます。他人に聞く情報収集として、信頼感を覚える要素としては以下4つ。
チェックリスト
- ネームバリュー
- 対応実績数
- 資格・受賞歴
- 家族親戚、友人知人の声
それぞれ、見ていきましょう。
1.ネームバリュー
コロナ以後は大きく価値が下がりそうですが、昔はブランド品がバカ売れしました。容姿端麗の美男美女タレントがテレビや雑誌などで宣伝すれば、それに憧れて商品・サービスが売れたわけです。心理学の単純接触効果もあり、テレビCMは絶大な広告効果をもたらし、プロモーションの要でした。
プラダやグッチ、シャネル、ルイ・ヴィトン、エルメスなど、海外から輸入された高級ブランドバッグや財布などもステータスのひとつであり、芸能人やタレントが乗り回すフェラーリやポルシェなどのスポーツカーにも憧れる人が続出という価値観が日本全国の平均的な消費者像だったと記憶しています。
TVCMで宣伝している大企業はお金を持っているし信頼感がある、といったネームバリューはマーケティングにおいて重要だったんです。
2.対応実績数
年間●●●件、月間●件など、数多く仕事をこなしていることは信頼のおけるモノサシのひとつでした。もっというと、老舗の企業のほうが信頼感はさらに増していたイメージです。2020年現在では実績数はそれほど気にしなくなった印象が強いです。
性悪説で考えれば、販売側が手前味噌で発信している実績の数値は正当性の確認もできません。うがった見方をすれば「言っているだけで実際、水増ししてるんじゃないの?」という見込み顧客もいそうです。実績はあくまで販売側が提示しているものなので、消費者側の視点ではないこともいまいち刺さってこない要因といえるでしょう。
3.資格・受賞歴
ネームバリュー、対応実績数の話をしてきましたが、「資格・受賞歴」については2020年現在においても信頼感の証だと考えます。あなたがボクと同じコピーライターなら宣伝会議賞の受賞はスゴイ!となるでしょうし、広告マンなら朝日広告賞や読売広告大賞などの受賞歴は一目を置きますよね。
厚生労働大臣賞など、政府機関による受賞歴なども客観的なお墨付きとしてはやはり信頼感が増しますよね。資格・受賞歴は競合との差別化としてもわかりやすく、専門性の証明にもつながるので現代においてもアピールしていきたい要素のひとつです。
【業界の闇を暴露します】
モンドセレクションなどは、1品につき1,150ユーロ。日本円にして140,000円程度支払うことで、品評を依頼でき、実はお金を出せば購入できるなど闇があります。気になる人は、「モンドセレクション 買える」などでググってみてください・・・。あ、ボクはモンドセレクション賞自体は否定しませんよ。本当においしいお菓子などもありますからね。ただ、事実だけはお伝えしたかった感じです。
4.家族親戚、友人知人の声
家族や親せき、友人・知人など、いわゆる身近な人の口コミです。性差がある気がしていて、男性よりも女性のほうが口コミを重視するような傾向があるという印象があります。昔も今も、そしておそらくアフターコロナでも口コミは信頼の証となり続けるであろうと予測します。
CtoCでモノが売れる時代へ
インターネット普及以前は、消費活動といえばBtoC(Business to Consumer=企業から一般消費者)もしくはBtoB(Business to Business=企業から企業)だけだった。CtoCなんて、大きな公園などでやるバザーかフリーマーケットくらいでした。 でも、今は違います。
Yahoo!オークションに始まり、メルカリやラクマ、ジモティー、PayPayフリマといったフリマアプリが登場し、CtoC(Consumer to Consumer)が商流として定着し、日本の商習慣が変わったことに驚きを隠せませんでした。 そして、顔も本名もよくわからない個人から商品を買うときに唯一参考になるのが、実績ともいえるレビューだった。
CtoCの定着によって、これまでのBtoCにもレビューが商品・サービスを選ぶうえでのモノサシとしての大切な指標になったともいえるのだと思います。
インターネット普及後の「信頼感」
ずばり、インターネットの口コミやレビューです。
ネット上の口コミやレビュー
インターネット普及以前と違うのは、知らない人の口コミでも参考にするという点。ここが究極の違いであり、価値観の変容です。家族や友達の感想や推薦ではなくても、自分が欲しくて検討している商品・サービスを実際に購入や利用したレビューがあれば、顔も本名もわからなくても参考にするようになったわけですから、非常に大きな消費者行動の変化です。
提供者の主観的発信より、利用者の客観的発信を「信頼感」のモノサシとして見るようになった。
2.口コミ・レビューが信頼感の定石
おなかすいたら・・・⇒食べログのレビュー見てみよう。
新しいPCを買いたい・・・⇒価格.comのレビュー見てみよう。
気になっている本がある・・・⇒Amazonのレビュー見てみよう。
このように、無意識にレビューをチェックする時代だなと思っています。第三者のお墨付きが信頼感につながるので、Amazonや楽天、価格.comなど、客観的なレビューを掲載したECサイトはやはり利用が促進されるわけで、マーケティングの観点から見てもみんなが使うよなぁと非常に感心しています。
インターネットの普及によって変化した消費者の行動モデルについては、AIDMAの法則とAISASの法則で説明がつくので、マーケティング用語もしっかり押さえておきましょう。
知っておきたいマーケティング用語「AIDMAとAISAS」
AIDMA(アイドマ)の法則やAISAS(アイサス)の法則を聞いたことがありますか?
簡単にいうと、消費者の購入までのプロセスを示した行動モデルを指すマーケティング用語です。
AIDMA(アイドマ)の法則とは?
- Attention(認知・注意)【認知段階】
- Interest(興味・関心) 【感情段階1】
- Desire(欲求) 【感情段階2】
- Motive(動機) 【感情段階3】
- Action(行動) 【行動段階】
これらの頭文字をとって、AIDMAの法則と呼びます。2020年現在からちょうど100年前となる1920年にアメリカのサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱された「消費者の購買行動プロセス」で、広告・マーケティングの業界人ならまず学んでおくレベルの概念です。
たとえば、
TVCMで知る(認知)→自分にぴったりと感じる(興味)→悩みが解消するので欲しくなる(欲求)→店頭であと残り一個しかない(動機)→買う(行動)
というイメージです。認知のところは家族や知人の口コミでもいいですし、動機づけのところは芸能人も愛用といった内容などでも成立します。
AISAS(アイサス)の法則とは?
AISAS(アイサス)の法則とは、1995年に電通が考案した、AIDMAの法則を現代に応用した「消費者の購買行動プロセス」のことです。
1.Attention(認知・注意)
2.Interest(興味・関心)
3.Search(検索)
4.Action(行動)
5.Share(共有)
ここで注目したいのが、「検索」と「共有」です。
「検索」とは、GoogleやYahoo!などによるインターネット検索のことであり、「共有」はSNSやブログなどでの個人のシェアのことを指します。
これまでは他人から情報収集をしていたのが、「検索」ができることで自分での情報収集に変化したことが消費行動において非常に大きな転換といえます。
また、これまでは口伝えだった感想や推薦をSNSなどによる「共有」によってインターネット上で広く拡散できるようになったことが、私たち消費者の行動プロセスを大きく変えたことがわかります。
3.信頼感のあるキャッチコピーのカギは「数字×低姿勢」
ただ、クライアントによってはレビューやお客様事例がないケースもあるでしょう。レビューを載せていないサイトには、「主観的発信(数字) ×低姿勢」を織り交ぜたキャッチコピーが有効です。
これまでの流れからいくと、主観的発信(数字) だけじゃ、ダメなの?と思うかもしれませんが、上述で実績だけではNGと伝えたとおり、企業側が対応した数は重要視されません。
信頼感のあるキャッチコピー例1「飲食店」
たまたま、★3.5以上です。
【解説】
食べログで★3.5以上の飲食店は一般的に「おいしい」といわれています。そのまま、★3.5以上ですという打ち出しではイヤらしさが出てしまうところを、「たまたま」という謙虚ワードを添えることで自信満々な雰囲気を封じ込めています。レビュー数が多い場合は、たまたまなわけないんですけどねw 日本人は特に低姿勢を好むのでウケが良いはずです。
信頼感のあるキャッチコピー例2「工務店」
申し訳ございません。
年間500棟から300棟しか
建てないことに決めました。
【解説】
実績数を重要視しない空気感を逆手にとったアプローチです。「昔は稼ぐためにも数をたくさんこなしてきていましたけど、質を重視するように方向性が変わったんです」というメッセージを暗に含めています。
最初に謝罪しているところもポイントです。別に悪くないのに、謝ることで注目を集めます。キャッチコピーだけではニュアンスはすべて伝わらないので、リード文やコンセプトのテキストなどで補足し、思いのたけをしっかり伝えるかたちがベターでしょう。
信頼感のあるキャッチコピー例3「士業」
顧客満足度94%・・・
6%の改善努力に励んでいます
【解説】
顧客満足度94%だったら一般的には素晴らしいし胡坐をかきそうなもの。それを、不満6%に目を向けて100%を目指す姿勢を伝えたら、なんかいいなぁって思いませんか? キャッチコピーは同じ材料でも工作の仕方でうまく魅せるような部分があるので、やわらかい自由な発想を持って応用してみてくださいね。
いかがでしたか?
さらっと書くつもりが、消費者行動のプロセスの変遷などの話を解説しはじめたら長くなってしまいました。
でも、最後まで読んでいただいた方は信頼感を出すキャッチコピーの具体例とアプローチ方法まで理解できたと思うので、うまいこと応用してもらえたらうれしいです。
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今回の記事の内容はYouTubeでも動画をつくっているので、よかったら復習の意味でもご覧くださいね。